小鳩ケンタ 西尾勝彦

ONSADOYASA 第二回目は、おんさ展の言葉ジャンルで第一回目から参加されている、奈良の詩人 西尾勝彦さんと、おんさ展知り合ったメンバーと朗読のユニット「ななつきぐも」を結成され、最近は個人でもコバトレーベルと立ち上げて活動されている小鳩ケンタさんへのインタビューです。おんさ展に参加することで、言葉を使った作家活動をスタートさせたお二人、その後様々な人と出会い、活動幅が広がっていきました。そんな経緯や、おんさ展の印象、また詩が生まれてくる過程などお聞きました。

聞き手 BOOKLORE 中島恵雄

おんさ展の印象はいかがですか?

小鳩ケンタ(以下 鳩):最初は本当に助かるというか、芸大を出てても、どこのギャラリーに行ったらいいかわからないし、教授とかも老舗のギャラリーしか知らないから、おんさ展に出ているギャラリーはカジュアルな感じはしましたよね。

西尾勝彦(以下 西):僕も2008年のおんさ展の第一回目があって、しかも「言葉」部門があったから参加したんです。

:絵描きさんにとっては、こういう公募展は普通かもしれないけれど、言葉でこういう感じのものはない。「叫ぶ」とかはあるけど。

西:僕もそういうの(叫ぶとか)、知ってたけど、興味はなかったからね。

小鳩さんはおんさ展には何年から出してます?

:2010年かな。

言葉ジャンルはおんさにBOOKLOREが関わっていたっていうのがあったから入れたんですよね。

:奇跡的なことですよね。言葉があるって。

西:僕が文章を書き始めて半年くらい経った後に、おんさ展があるって知ったんです。

:書き始めた時期って覚えているんですか?

西:2007年かな。永井宏さんのワークショップに申し込んで、それが2008年の1月からはじまったから。

:え、習い事的な始め方?

西:いや、ずっと書きたいとは思ってて、その時に誰かに習った方がいいなと思っていた時に、永井宏さんのホームページの日記を読んでいたら、ちょうどそういうのを見つけて。

:いきなり習ったんだ?

西:ちょうどいいやって思って。それから、ちょうど半年後くらいにおんさ展があって、本当に良いタイミング。

:そんなにうまいこといくんですね。

西:僕もびっくりした。

:このタイプの人は、本当にいないんじゃないですか。

西:僕は本当にラッキーだったなと思ってます。

:これは、誰かが西尾さんに憧れて、西尾さんのようになりたいって思っても、全くアドバイスのしようがない。

西:まぁしようと思ってというより、そういう状況になってたんで。

それまで書いてなかったんですか?

西:書いてないです。

:なんか難しい文章を書いてたって聞いたけど。

西:昔は教育研究文みたいなの。硬い文章を書いてた時期が5年くらいあって。

:そこでわかりやすく伝える訓練はしてたんでしょうね。

西:してたのかもね。それからちょっとブランクあって、奈良に引っ越してから、すごい綺麗な風景が広がってたんで、それを表現したいなって。

:そこを全部さらーっていきますね。

西:生まれと育ちは京都なんですけど、25,26歳で大阪に3年住んでて、それから嫁さんの実家のある奈良に引っ越してきて、最初は奈良町に住んで、そこから一旦、もう少し町の方に住んでから、今のところにまた引っ越してきたのが2006年。そこが庭に鹿が出てくるような地域だったので、そこで写真を撮る人もおるやろうけれども、僕は言葉で表現したいなと思っていたら、永井さんの日記にワークショップ募集とあって、その半年後におんさ展ですね。

第一回目のおんさ展って言葉ジャンルで、本を出している人は少なかったですよね。

西:何人かいましたよ。

そうですか。何となく立体が多かった印象がありましたね。今とは全然違いましたもんね。言葉を形にしたような展示が多かった。その中で西尾さんは本だったので、印象に残ってます。

:インスタレーション的なのが多かったんだね。

西:そう。mizucaがデビューだね。

:西尾さんはブレてないですね。

小鳩さんが永井さんのワークショップに参加したのはいつからですか?

:おんさ展に参加した後ですね。大学に行っていたときに、誰かに習うっていうこと自体に絶望していたのですが、beyerの方がやたらと薦めてくるので、暗示にかかって(笑)。永井さんのワークショップは2010年からの1年だけです。

そもそも、なぜおんさ展に出展しようと思ったんですか。

:元々、絵をやってたんですよね。イラストをやってたんです。違う場所で一回だけ絵を出してみたら、絵本作家さんの人にキャラクターが面白いと言われて、その人の展示を東京へ観に行って、本を出したって言うから、大阪のお店にも売り込みをしてあげようっていうことになって、iTohenさんに売り込みにいったんですよ。その時におんさ展のチラシが貼ってあって。最初は絵を出そうと思ったんだけど、ギリギリのところで急に言葉にした。言葉なんて、こんな報われないものに、二度と関わらないと大学の時に決めたんですけどね。

西:大学の時にも文章書いてはったの?

:絵の大学だったんですけど、途中から言葉のインスタレーションみたいなのをやってて。なんかモヤモヤしてて。未だにモヤモヤしているんですけど。なので、西尾さんとは全然始め方が違う。西尾さんはここで(おんさ展)生まれた感がすごい。

西:そうそう。おんさありがとうって。

よかった。

:西尾さんは、丁寧におんさに寄り添ってる。

西:僕もたまには出なくてもいいなかって思ったりするんだけど、彼ら(運営スタッフ)の顔がバーッと出てくるからね。頑張れってね。

:僕も決して忘れたわけじゃないですよ(今年は協賛させてもらってます)!

西:今年のおんさ展は人数減ったよね。

去年が多かったので、平年並みが少し減ったくらいですかね。

:僕も一回くらい、ちゃんとおんさ展に合わせたことをしないといけないと本当に思います。

西尾さんの私家版って、おんさ展で初めて作ったんですか?

西:そうそう。ちょうど書きはじめて、詩が10個くらい溜まったところだったので、これをまとめたらいいやと思って、ホッチキスでパチパチと止めて出した。

:理想的ですね。

西:本当にタイミングよくて。未だに応募する時の気持ちも覚えてるもん。本当に大丈夫かなぁって思いながらね。

本を出版したのはいつでしたっけ?

西:BOOKLOREは2010年。

書肆山田も一緒ですよね。

:なんでいきなり書肆山田で出したんですか。名だたる詩人が出してるところじゃないですか。

西:僕もあんまり詳しくないからね。おんさ展がきっかけで冊子をつくるようになって、それが2008年と2009年。そして同じく2009年にmizucaで個展もさせてもらったんです。それで三冊できて、それを活字にしたいなと思って、ブックロアに三冊にうちの半分、残りの半分を書肆山田さんでって振り分けたんです。

:中の詩は全部つかったんですか?

西:ボツもありますよ。私家版の3冊に掲載していない詩も入れたし。だから、おんさ展で中島くんに出会って、それも助かったな。おんさ展、有難うって感じ。

:美しいなぁ。

でも小鳩さんもおんさ展がきっかけで、ななつきぐもを結成しましたよね。2010年に参加したときに出会ったんですよね。

:いや、2011年じゃないかな。あの子達は、2011年にはじめて出展したからね。その時の交流会で会って、その直後に誘われて。僕はまだ始めたばかりだから、ダメって言ってたんだけど、結局そうなっちゃって。だから、去年やっぱりっていうことで一回やめるってことに。

3年間やってたんですね。おんさ主催者としては、すごい嬉しい話だったんですけどね、おんさがきっかけで生まれたので。

:でも、今年おんさ展に参加されているhitotoさんで、ななつきぐもさんが7月に何かするということなので、ほんの少しだけ参加するかもです、分かりませんが。

ななつきぐもで?

西:再結成?

:いや、with フレンズってことで。確かに、おんさ展がきっかけでいろんなことが起こっているっていうのは、度々目にしますね。

角谷さんともいろいろやってますもんね。

:それはそうですね。

コバトレーベルもそうですよね。

:そうね。

コバトレーベルは元々角谷さんが言い出したんですか?

:半分冗談で、つくるみたいになって。も誰か編集とか入れて作ったらとか。asaruさんと繋いでもらったりとか。結局流されるままです。

朗読もされてますよね。

:朗読の方が、本をつくるよりも楽ですよね。こんにちは!って言って、ありがとう!って言って帰るだけですからね。

朗読はいつからやってますか?

:ななつきぐもさんに誘われて。

はじめては独りではないんですね。

:ななつきぐもを辞めた後に、泣きながら独りでやってる。

朗読をやりたいとは思ってなかったんですか?

:だって、舞台上でキラキラすることでしょ。そんな、もう歳だしさ、ななつきぐもで誘われてなかったら、ほぼやってなかったでしょうね。

それはすごいな。いまじゃ、朗読一番やってるんじゃないですか。

:ななつきぐもは、本当に朗読の機会が多かった。それで、自分でやる時は減らそうと思って。

それでも多い気がしますけどね。

:イメージですよ。でも朗読は本当に楽しいです。

朗読は何が気持ちいいですか?

:僕の中で、表現したいことっていうのがフワっとあって、リーダーポエムライターじゃないんですけど、詩は書いただけの状態は歌詞っぽい認識があって、読まないと伝わらん感じかな。自分はそのタイプだと気付いたときに、愕然としたんです。一旦、やめようかと思ったこともあったけれど、人と関わっている以上そうもやめられなくて。なので、恥ずかしくて仕方がない。詩人ってテキストで成立すべきだと思ってるんですよ。音なんて! っていうのが自分でも思う。

書くときは、声に出すんですか?

:出さない。ボツが山のようです。うんざりです。でも、声に出したら許せる状態になるっていう気もしていて、そんな感じで、困ってます。

西尾さんは朗読はいつからはじめました?

西:2009年にmizucaで個展をしたときに畑尾さんが誘ってくれはって、二人で。

西尾さんの展示のときですか?

西:そうそう。その展示中に、一緒に朗読会をやりましょうって話がきて。その時がはじめてで、僕は朗読会は見たこともないし、やったこともないし、それでやってみて、最初の印象が、聴きに来る人がすごい真面目で一生懸命で、畑尾さんが読んでくれているときに、観客の人を僕は隣でずっとみていたんですけど、じーっと聞いてたんですね。それがちょっと怖かったんです。すごいことやっているなぁって思って。次の年くらいから独りでやりだしたときには、できるだけ笑ってもらうように、余計な話ばかりをしてっていうのをしてます。あんまり緊張して聞いてもらうのは僕がしんどい。

次の年から独りでやろうっていうのがすごいですね。

西:いや、実は独りではなくて、歌ってくれる人がいたりとかいましたね。最近ようやく独りでやるようになったけれど、いつも誰かがそばにいました。朗読会って本当に地味なイベントなんでね。こんなんでいいのかなっていつも自問自答しながらですね。

:音があった方が結局華やかになりますよね。でも西尾さんは作家さん自体がストーリーを持っていて、作家に会いたいなと思わせるタイプの作家さんだから、一番いいんじゃないですか。あらかじめ音楽が鳴っているっていうか。本で伝わっていることが、反復されるような朗読会。作家さんと会ったという満足とともに帰れる朗読会なんじゃないですかね。

西:そういったご意見初めてです。

:ある程度、活動が積み重なって、西尾さんって人が奈良に住んでてっていうのがあって、西尾さん自身もストーリーをブレさすようなことをしないじゃないですか。急に都会の詩を書いたりとか、決してしない。

西:最近はもうマンネリでいいかなって思う。

:迷いなくそれをいいますね。すごいな。

西:それ以外ないし、もっと深いマンネリを突き進んでいこうかなと。見る人、聞く人が実はそれを求めているところもあるのかなって。

:安心するんですよね。

西:「いつも一緒」が芸であるというかね。

それは強いですよね。文章を書いたときと、朗読しているときに出てくるものって違うんですか?

西:それは僕は逆にわからんだよね。客観的に自分のものはよくわからないんです。

コバトさんとはまた違うんですね。

:西尾さんの場合は、テキストで完成した世界を与えた後に、朗読をして、その日の作家さんのストーリーを手渡しているっていう感じかな。

朗読を意識して文章は書いてないんですね。

西:朗読しているときは、同じのばかり読んでしまう。朗読に適さないものは、読まないかな。 コバトさんは、朗読うまいよね。聴かせるのが。

そうなんですね。僕はコバトさんの文章は読むよりも聞いた方がいいなと思います。

:気持ちいいっていうか、許せるっていうか。

西:読んで完成する?

:うーん。どうなんでしょう。でもそれでCDを作るって話とかにもしなったら、ますます地獄じゃない。

西:朗読のCDって僕も聞いたことあるけど、すごい面白い。

:谷川俊太郎さんのピアノと合わせてとかすっごくいいと聞いた事があります。

僕は音楽と合わせて読むより、言葉だけの朗読の方が好きですけどね。

:音楽家さんによりますよね。音は音で、音楽っていう巨大なジャンルがあるんで怖いですよね。

永井さんの朗読って聞いたことありますか? 永井さんも朗読の後に、最後にギターを弾いてしまうんで、あれでごまかしてて、あれがなかったらいいのにってことは何度もありましたね。

西:朗読だけで終わると、何か申し訳ないっていう気持ちになる。

みたいですね。

:本当に怖い。名古屋で読んだときに、あんまり面白いこと言えないし、ピターっとした空気で恐かった。ファニーな要素が入れにくい。

僕も大学生のときに、永井さんがされていたポエトリーリーディングをはじめて見たのですが、あの異様な雰囲気、何を持って帰ったらいいのかわからない雰囲気、あの空気は他にはないから僕は好きだったんですけど。これで終わりなのっていうか、あの時間は他で体験できなかった。それこそ、おんさの言葉ジャンルのbeyerの交流会の、あの感じはすごく好きなんです。 

西:あれは何かいいよね。

:あの状況があるっていのが本当に異常事態っていうか、こういうスタイルのこういう系統の朗読っていうのが、やっぱり永井さんがはじめたところにしかないのかな。けど、なんでないんやろうなっていう感覚はずっとあったかな。

西:僕は本当にこれしか知らないからね。詩のボクシングとかもテレビでちょっと知ったくらいだからね。

コバトさんは他にいろいろ出てるんですか?

:出てないです。だから、僕は全部自分で考えるしかないから、すごく疲れる。型がないから。自分がどういう風にやっていくかっていうので、こうかなって思うジャンルをやっている人が本当にいないから、絵描きさんに身を寄せたり、音楽家さんに身を寄せたり。

コバトさんは独りでやっているイメージはありますけどね。ワークショップとかもしてましたよね。

:一回だけね。

コバトさんは、自分だけで何かやったことあるんですか?

:hitotoさんで一回朗読をやって、全部読んでしまおうと思って、朗読を1時間半くらいやった。それは本当に大変でした。でも、それをやってから、30分くらいで音楽家さんと組めば、割と大丈夫なんだっていうのがわかって、手探りで型を見つけている最中。 西尾さんは最初から落ち着いているじゃないですか。僕もあと2年くらい経って、西尾さんがはじめたてのころの型ができるかもしれない。今は型自体がない。

西:型自体がないのが型なんだと思う。

:えーっ! ずっと。それはもうわけわからない。コピーライターみたいなこともしてたりするんですけど、やる度に自分がわからない。枝葉ばかり増えていって、幹がない。

西:それでいいじゃない。

:幹が欲しい。幹だけが欲しいんです、僕は。僕がこういうのがクールだなって思っているものは、僕にはない。

西:肩書きがなくて、コバトですって、コバトっていうジャンルを作ったらいいんですよ。コバトっていう型を作ればいいんですよ。

:もう40だし、情緒の安定がね。振り回されすぎてる。西尾さんは迷いみたいなのはないですか? 葛藤というか。

西:僕は仏教書が好きでね。だから、そういう本を読んでいると、無の境地が目指すことかなって。

:人の創作物って読みますか? 僕は実用書とかルポルタージュとか、結構面白くて読むんですけどね。社会学とかも。人の表現は一時期読まなくなりましたね。

西:僕はけっこうけったいな人が好きで、奇人変人の部類。

:そこに一貫性があるんですよね。そこらへんきっちりしてますよね。アイドルが好きでとかないですよね。

西:そういうのはないですよね。

:それはナイスけったい! 西尾さんはそれで生きているというのが、本当に奇跡というかね。本当は、ソローも好きなんだけれども、実はドラゴンボールも好きみたいな感じがこの人にはない。

西:ドラゴンボールはもちろんリアルタイムだけど、そんなにはまらなかったかな。

:普通、はまるよね。

ドラゴンボールは百発百中だと思ってた。

西:僕が今まで一番はまった漫画はつげ義春なんで。

:西尾さん自体のストーリーが本当にようできてる。映画の登場人物みたい。ほんまに。そんなんに、詩を書かれたら、そりゃ。

詩が生まれる瞬間はどんなときが多いですか? 絵描きさんとかだと、個展を決めないと描けない人と、常に描いている人とがいたりするんですが。

西:僕も常に書いてないですけど、でも締め切りがあるから書くっていうことも絶対ないですね。

常に書いてないっていうのは、書くきっかけっていうのはあるんですか?

西:何か固まってきたらとか書くとか。ある時期にバラバラってできるんです。そこからまた、書けなくなって。

散歩しながら何かが浮かぶっていうことでもないんですね。

西:たぶん散歩をしながら、何かを吸収しているんだと思うんです。

文字にするのがまた後になる。

西:そう後になる。たまにキーワードばっかり書くこともあるんですよ。それを残しておくんですよ。それをあとでじーっとみて、かといって、それで何も浮かばないこともあるし。それを寝かしておいて、あとで出てくることもある。

ストーリーがある文章でもその場では書かないんですね。

西:書けないですね。ある程度、間があいて書ける。

:その待てる体力というか、待つのがすごく難しい気がしていて。

西:僕は待つのが好きだから。

:でもさ、待つっていうことは来ないかもしれないっていう恐れがあるから、人はつい追いかけちゃうんだけど、西尾さんは待てる人っていうか、自分から行かないっていうか。

西:追いかけたら逃げていくからね。だから、無理して書かないようにしている。

コピーライティングとかも、じゃあやろうとも思わない。

西:それはやらない。限定されたら書けない。

:書けないっていうのが、自分のことが見えてる。それがすごい難しいことだと思う。

西:そう言ってもらえるのは有り難い。こういった話をできる人が普段は全然いないから今日はすごく新鮮。

:僕は詩がいつ出てくるかは、西尾さんとは全部逆です。追いかけて、逃げられて、泣いて、すねたあとに、素直な自分が出てくる。やっと。

追いかける前に何かあるでしょ。テーマというか。

:僕は元々、絵描き出身で、ピカソや予備校で習った先生もそうだったんだけど、絵筆を乾かすなって、よく言ってはって、何も描けないっていう日はありえなくて、西尾さんはエネルギーを貯める方だけど、それとは違う、何かは書けるはずっていうのがあって、書くことを自分で縛り付けているイメージがある。まぁそれが嫌なんですけど。

嫌だった、やめたらいいのに。

:そんなに嫌じゃない(笑)。それでね、書けないんですよ。でもね、それでちょっとわかったんでけどね。書けなかった悔しさが後々溜まってくるんですよ。だから本当に書けるかもしれないっていう時に、それが書く気力になる。いつか書くために、失敗作を普段から書いている気がしていて、効率の悪さにへきえきしている。

それは何かきっかけがなくても追いかけられるんですね。

:今までずっと普段から何かは絶対してきてたからね。

そのパワーはすごいな。

:でもベースは西尾さんと似てて、降りてくるまで待つしかないっていう。その型の違いっていうか。西尾さんは、その間合いがすごく効率的なんだなって思いますね。見えているから待てる。どこまで待つかは自分が見えてないと待てない。

西:見えてないですけどね。僕はズバリ書けなくてもいいんですよ。

:わかります。書けますけどね。

西:そこまでして書きたいかっていったら、そんなんは嫌ですね。自然と書きたいし、自然と書けるっていうのがいいですね。

:夫婦関係とかもめた後に、仲良くなったりしません? 僕は詩とそういう感じですね。

西:それって言葉追いかけているというよりは、女性を追いかけているっていう感じだもんね。

:そう、その後にすねて、泣いてって。

西:そういう恋愛関係みたいなんでしょうね。

:それは絵描きさんも一緒なんだろうなぁって思うんですよね。

西:本当は絵描きさんなんでしょうね。

:言葉で絵を描いているとか言ってたけど、途中から「音」とか言い出したからわけわからない。最終の落ちは、「絵」か「音」だということだから、言葉ではないっていう。言葉使っているけど。

西:変な力入れたらね書けない。

:だからって、力抜いたらかけるっていうわけでもなくて、書けないものは書けないし、書けるものは書ける。

では、頭の中じゃなくて、ノートに言葉を残していってるんですか。

:今年は、プラネタリウムで朗読をするって話があって、それだけに集中していたので、ずっと書きためていました。ノートがたまっていく状態ですね。

西尾さんはどちらかといって、頭の中に溜まっていって、書くぞっていうときに書くんですか。

西:最近あんまり書いてない。書いたのもあるけど、ちょっと無理があったかな。それはとりあえず、置いておいてまたあとで見直すとかね。

:西尾さんは詩人になりたい夢があったんですよね。子供のころから、表現をしたいっていう。そういうタイプの人が、そこに執着がないっていうのが不思議であったりする。恋は好きだけど、別に自分から追いかけないっていう。

西:あまり執着しないんですよね。それも仏教の教えですよね。

:守ってるなぁ(笑)

西:もともと詩って、たどっていったら、神さんの言葉がおりてきて、それを歌うみたいなのが出だしらしいので、宗教的な部分がもともとある。シャーマンとか。

:祝詞とかね。

西:そうそう。そういうのを大事にして書いたものの方が、やっぱり相手に伝わるかなって。

じゃあテーマがあるわけじゃないですね。

西:テーマはあるときもある。テーマがあると書きやすい。でも、テーマもそんなに見つからないからね。

:自分から出したテーマは書きやすいんですね。

西:自分で出した大きなテーマがあれば書きやすい。今回もおんさ展では「耳の人」の続きを出すんですけど。去年出した「耳の人」のあれはあれで僕の中では終わっているつもりだったんだけど、出したら出したで、続きを書きたいなってことになって、それで今回のも中途半端に終わっているんですよ。とりあえず、出して、読んでもらって、そういうことをしたら、自分の中で一旦流れていって、それでまた新しいものが入ってきたらいいなって思ってるんですけど。

:作家さんって大きく2パターンに分かれるらしくて、自分の型を作ってからやるほうが作業しやすいっていう人と、型なしでできたものを寄せ集めたものが、俺の型がっていう人と。西尾さんは型を作って、そこでやっていくのが気持ちいいんですね。そっちがやっぱり伝わりやすいんだろうな。

西:最近はそうなってきましてね。以前は、作ってからまとめてたんですけど。

:前から奈良型があったじゃないですか。

西:そうか、奈良型か。なるほど、それが型落ちになったから、また違う耳型とかのほほん型とか、そんな感じかも。

:完全に持って生まれたものですね。僕は型が見つからないというか、見つけないようにしてる。

まぁ型を作るのはできないことはないんでしょうね。

:型が気持ち良いと感じている脳波は出てないわけだから、気持ち良いものにはならないのかもしれない。

求めてないんでしょうね。

:体質がオルタナティブというか、がーんって鳴ったエレキギターの最後の余韻のこの辺のノイズが好きとか、そういうことばっかり言っているから、こんなことになっちゃった。そんなん伝わるわけがない。だからおんさに応募してから、僕は本当に迷いが20倍くらいになった。

長く続けてたら面白いことになりそうですよね。途中でやめたらダメですよね。

:何がやめることなのかな。

やっぱり外に出すっていうことが大事だと思いますけどね。

:まぁそうでしょうね。

そういう意味では、おんさは一年に一回あるので、書く機会になるのかなって。それはそれで、ひとつの役割かなって思います。作家さんはやっぱり人に見てもらう機会っていうのが大きいなというのがあるみたいですね。今後のおんさに期待することってありますか?

:若い世代の子のきっかけになればっていうのを本当に強く思っています。

実際おんさ展やる前まで、こんなに言葉を表現する人が、まわりにいたんだなっていうのは知らなかったです。僕らは永井さんのことしか知らなかったんで。

:言葉は地図が無さすぎるからね。

西:僕は本当におんさ展があったから助かった。

:おんさ展が無いとなると、他にないからね。

西:やっぱり若い人を育てるのが一番のテーマかも。あと奈良でもやってほしい。

なるほど。小鳩さんは他に何かあります?

:ダンサーの方とか、生の会場があってもいいと思う。音楽とか。生を必要としている人って結構いると思う。音楽家さんとかも、いざどうしてはじめたらいいかっていうのもわからないだろうし、それは生の方が伝わるだろうし。

確かに、フェス的な会場を借りて面白いかも。場所さえあればできると思うんですけどね。

Profile
西尾勝彦 katsuhiko nishio
奈良在住。2008年より、私家版の小詩集を作り始める。2010年、『フタを開ける』(書肆山田)、『朝のはじまり』(ブックロア)を出版。2012年、『言の森』(ブックロア)を出版し、同年旅人と詩人の雑誌『八月の水』(ブックロア)を創刊する。関西、関東と定期的に個展や朗読会を開催。フリーペーパー「粥彦」を不定期で、手書きでマイペースに制作している。
http://kayuhiko.exblog.jp

小鳩ケンタ kenta kobato
1974年生まれ。2010年より詩を発表し始める。
2011年 朗読グループ「ななつきぐも」加入。2014年脱退。以後、ソロ、コラボレーション含め関西で活動中。2014年に自身が立ち上げたコバトレーベルから『檸檬のピーチ』を出版。
http://kobatokenta.web.fc2.com
https://twitter.com/KobatoKenta

聞き手:中島恵雄
出版レーベル BOOKLORE 運営/オンラインストア「雲の生まれるところ」店長